2018.07.21|建築現代
ゲスト元木大輔(DDAA inc.)
@十三シアターセブン(box1)
文章:榊原充大(RAD、建築家不動産)
「トークイベントの機会をつくりたい」というシンプルな理念から久山敦さん率いる建築家不動産(榊原も関わっています)とkabuhausが共同で開催するレクチャーシリーズ「建築現代」。関東開催と関西開催を交互で行う第3回目(今回は大阪十三開催)のゲストが、DDAA inc.<http://dskmtg.com/>の元木大輔さんでした(東京から)。RAD名義で2011年に開催した展覧会に出展してもらったり(「Space Ourselves」展)、2012年には建築雑誌の展覧会を開催したときに会場構成を担ってもらったり(「ARCHIZINES」日本巡回展)と、個人的に元木さんとは短くない付き合いがあります。プロダクトデザインから展覧会会場構成(現在開催中森美術館「日本の建築展」会場構成も)、建築設計までそのプロジェクトは多岐にわたり、請負での仕事のみならず自主的なリサーチも一定程度継続しているところが特徴的。のみならず元木さんはセンスがよく、例えばそれはガードレールに取り付けるタイプのベンチを勝手につくり、グラフィティライターが街中に自分の名前や作品を残していく(ボム)ように置いていく「ベンチ・ボム」のプロジェクトでいい感じに混ざり合ってるように思います。もともとは「HAPPA BENCH」として自らの事務所の前のガードレールだけで試みていたようですが、リサーチの結果、管理している自治体によってガードレールの仕様が異なることが判明。23区全部のガードレールにあったベンチをつくってみよう、というアプローチで実際に様々なベンチをデザインしているそう。こうした姿勢は「街をどう使うか」というアクティビストとは異なる、つくり手特有の視点と言えるかもしれません。「そういう自主的なリサーチの割合がいま1割以下のところ3割くらいに増やしていきたい」と元木さんはトークイベントの最後で言っていましたが、実は◯◯◯◯◯らしい(これはトークイベントでは言っていないので伏せ字)。見てる人見てる……。アーティストのKAWSに影響を受けているんですが、彼はバス停や電話スタンドの大企業広告ポスターへのグラフィティボムのためにポスターカバーの合鍵を持っていたらしい——とか、なんでそんなことを知ってるんだ?というレファレンスが要所に飛び出すのはトークも実際の仕事でも同じ。ですが、そうした広い関心と、関心あるところを掘り下げるリサーチのスキルと、つくり手のマインドと、適切なセンスがうまく結びあわさっているところには適切に人とお金が動くんだな、と一方的に納得した会でした。
2018.08.22